コラム

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ASPを利用した情報共有のススメ 〜 2つの追い風 〜

情報共有ツール導入の前に


ASPを利用した情報共有のススメ 〜 2つの追い風 〜


情報を「確実に守る」「タイムリーに打つ」「素早く走らせる」


求めるセキュリティ


ありがとうという情報共有


大切な情報を守るために


何でもかんでも情報共有?


ASPサービスの利用


クラウドについて


   私はこれまで、いくつかの支店や現場を回ってASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)を利用した情報共有ツールの普及展開を行ってきました。そこで必ず質問が出るのが、「ASPを利用した情報共有で、現場にとってどのようなメリットがあるのか?」という事です。
確かに、トップダウンによる明確な指示が無い状態ではこのような素朴な疑問が現場から出るのは当然です。これまでは、「現場業務の省力化」「コスト削減」「最新で精度の高い情報の一元化」などがASPのメリットとして謳われてきました。しかし、そもそもASPを使ったことの無い人にとっては、本当に現場業務の省力化につながるかわかりませんし、ASPの利用料を上回るコスト削減効果もなかなか定量化しづらいものがあります。

   

   しかし、最近になってASPに2つの「追い風」が吹いてきました。その一つが、今年10月に国土交通省から発表された『「建設業法施行規則」の一部改正等について』 です。これによると、構造計算書偽造事件により失われた建築物の安全性に対する不信を解消するため、請負工事に関する営業書類の保存義務対象に、(1)完成図、(2)発注者との打ち合わせ記録、(3)施工体系図を追加するとともに、保存期間が10年間と定められました。改正建設業法が施行される今年11月28日以降に作成した書類は保存対象となります。元請責任の徹底の観点から、発注者から直接工事を請け負う元請業者が保存の義務を負います。

   

   皆さんの会社では、これらは紙の膨大な書類となって、本支店、営業所、倉庫、あるいは個人宅などに保管されているかも知れません。10年後にその情報を検索しようとしても担当者の異動や定年退職などでなかなか見つからない可能性があります。

 

   しかしASPを利用すれば、これらはデータベースに保管され、アーカイブとしてCDやDVDで保存することもできます。二つ目は、情報セキュリティの向上です。近年、インターネットの普及や情報技術の発展に伴い、故意あるいは偶然による情報流出が業界を問わず大きな問題となっています。特に、顧客の機密情報や個人情報の漏えいは建設会社として絶対にあってはならないことです。

 

   近年、USBメモリやCD-ROMに顧客情報等を持ち帰り、ファイル交換ソフトWinny等をインストールした私有のパソコンで仕事をしようとして情報漏えいが起きた事件が官公庁や民間企業で発生しています。もしASPを使えば、USBメモリやCD-ROMによるファイル授受は不要となります。(もちろん、最終的には業務を行う個人のモラルが最も重要なため、ASPだけで完全に情報漏えいを防ぐ事は難しいかも知れません。)
また、ASPを使えば、「誰がいつ、何のファイルをダウンロードしたか?」というアクセス履歴が残るので、不正アクセスも防止できます。

 

   さらに、ファイルのアップロード時にウイルスを自動チェックするASPもありますので、顧客や協力会社にウイルスを感染させるリスクも低減できます。
まだまだASPによる情報共有は多くの建設会社にとって始まったばかりだと思います。今後、上記のメリットを現場だけでなく経営層にも説明し、理解を得ることが効果的な情報共有を推進する鍵になるでしょう。

 

「「建設業法施行規則」の一部改正等について(平成20年10月8日)」

http://www.mlit.go.jp/report/press/sogo13_hh_000025.html